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2007年 12月 10日

<Vol.532> 冬の音色・・・十勝川の朝

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シャリ、シャリ、シャリと絶え間なく本流を流れる氷の音がことのほか繊細に響いてきた。
静寂さの中に響き渡る美しすぎる冬の音色。
もしかしたら、この時期に訪れる十勝川独特の音色なのかもしれない。
冷たくなったリールからスカジットラインを引き出しながら、僕はふとそんな事を考える。


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そんな反面、冬の音色の主は僕らの釣りを困難なものにさせる。
キャストしたフライは流れてくる氷に阻まれて沈むという事とは無縁のようだった。
案の定、僕らは早朝の左岸での釣りを諦めなければならなかった。
それは冬の太陽が顔を覗かせても同じ事。
釣り人の吐く息はどこまでも白かった。


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さらに下流域の右岸に移動する事にした。
先週も訪れた乾燥した大地がむき出しのバンクが背後に迫るポイントである。
偶然出くわした地元の気さくなLFMの「ここでもFFMの姿を見るようになったか」とポツリとこぼした言葉が不思議と印象的だった。
確かにこの場所はLF向きのポイント。
FFMにとってはショートヘッドのスカジットキャストでないと難しいポイントなのかもしれない。


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嬉しい事にアメマスの反応は1投目からあった。
ややアップ気味にキャストしたフライがじっくりと沈み、スイングを始めて間もない頃にシャーベット状の氷がまとわりついたランニングラインを通じて感じる違和感。
やがてそれはアメマス特有の躍動感へと変っていく。
Salmon No.1のことさら冷たい逆回転音が十勝川の畔に響いた。
無垢な表情の50クラスのアメマスだった。
でも、そんなアメマスは僕が口元からフライを外そうとすると、ピュッとその口から未消化の10cm程のシシャモを吐き出したんだ。
食後のアメマスにはちょっと悪いことをしたかなと思う。


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僕はフィールドでひとりだけの釣りも好きだけれど、友人達と一緒に並んで冷やかしや冗談の一つでも言いながらワイワイと釣りをするのも好きなんだなぁと思う事がある。
この日の為に巻いたコーンヘッド付きのカラフルなチューブフライ、そんなフライを「まるでススキノのキャバクラ・フライみたいだね」と言う僕の下手なくだらない冗談に、一緒になって笑ってくれる友人達がいるだけで、ほんの少しは暖かくなれるからね。


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この日僕が出会った60クラスのアメマス、いつものアメマスの小さな優しい目ではなく、彼は鋭い目で僕を睨み続けていた。そして、不思議な事に尾鰭の下側が擦り減ったように少し欠けていた。
産卵行為に参加したアメマスなのだろうか。僕にはその理由が分からない。
でもそのファイトは力強かったし、釣り人にとっては申し分なかったように思う。
とにかく印象深いアメマスだった。


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冬の十勝川のアメマス釣りに行って、幸運な事にある程度の数のアメマスに出会ったりするチャンスに巡り合えたりすると、僕は贅沢な事にその1尾1尾との出会いの記憶というか印象そのものが希薄なものとなってしまうことが多い。
冬の十勝川で流れてくる氷の音色が、やがて日が昇り、時間が経つにつれて少しずつそのサウンドを僕の周りからフェードアウトしていくように。
僕が出会ったアメマス達の印象はますます僕の記憶の中で薄らいでいった。
そんな中で、僕はしみじみ思う。
やっぱり僕はまだまだ未熟なフライ釣師なんだなあって。


                                2007年12月8日 十勝川にて


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by d-yun5-fly-elise | 2007-12-10 19:34 | spey fishing | Comments(16)
Commented by 110-ken at 2007-12-10 21:08 x
Yunさん,こんばんわ

三週にわたり楽しい週末を一緒に過ごすことができましたね。
お陰様でスペイの腕も自分が感じることができるほど上達しました(^。^)
ありがとうございました。

さて,いつもながら一緒に時間を過ごし,同じ風景の中で釣りをしているのに文章と写真の表現力がスペイの飛距離と同じように格段に違います。あの「キャバクラフライ」もYunさんにかかると素敵な表現になってしまいます(笑)まるで魔法使いですね

自分は昨日,すべてのリールからラインをとりだし,グリスアップして1年を終了しました。この後はyunさんのブログでバーチャル釣りを楽します(^_-)
Commented by flyman44u at 2007-12-10 21:31
Yunさん、こんばんは。
激寒の十勝遠征お疲れ様でした。十勝の流れが生み出す氷のサウンド
僕も先週初めて聞きましたが、実に神秘的な印象が有りました。
いろいろなフィールドに足を運んでいても多分此処でしか聞く事の
出来ない神秘的な音なのかも知れませんね。

友人達と楽しく釣りをしているYunさんが何だか目に浮かんで来るようですよ。
そろそろ日本海かな?
Commented by jock at 2007-12-10 21:44 x
今年の十勝でのラスト釣行お疲れ様でした。
もう少しで下流部は凍結して暫しの眠りにつくと思います。
私は少し上流に移動してキャス錬とシステムテストで、まだまだ頑張ります(笑
また来年もお待ちしてますね!
Commented by tokyo_terry at 2007-12-10 21:53
Yunさん、こんばんわ!!
北は随分と寒そうだなぁ。ラインに付いたシャーベット状の氷・・・本州にいると、なかなか体験できない状況の中での釣りです。
そんな寒い中でも、キャバクラ・フライを咥えたアメマス。まだ産卵行動がモノ足らないのかな(笑)なかなかのイケメンのアメマスだから、モテモテのような気がするんですけどね。
Commented by ムラ at 2007-12-10 22:01 x
「明日は十勝ですか?」という私の質問に「行きます。札幌を二時に出発です。」と、何の迷いもない回答(笑)。
私の揺らぐ気持ちを決定していただきました(笑)。
おかげさまで皆さんとも楽しく釣りができました。ありがとうございました。
Commented by SHU at 2007-12-10 22:20 x
Yunさんこんばんは!
3週連続で寒い十勝をとても楽しくすごせました。有難うございました。
次回また宜しくお願いします♪
Commented by d-yun5-fly-elise at 2007-12-10 22:22
110-kenさん、こんばんは。
相変わらず自宅のPCが不調で、ネット環境に繋がりません(笑)。冷え込み始めた十勝川のイブニング、110-kenさんのアメマスとのファイトシーンの写真を送りたいのですが、もう少々お待ち下さい。
こちらこそお疲れ様でした。お陰で皆さんと3週に渡り楽しい時間を過ごす事が出来ました。
それにしてもキャスティングが静かになられましたね。やはりあれだけの時間スペイキャスティングを続けられた賜物だと思いますよ。

カラフルな「キャバクラ・フライ」はアメマス好みだったようです。でも、ちょっと派手過ぎたかもしれませんね(笑)。

今回で今年の釣りは納竿でしたか。でも、新聞の週間天気予報を見ると、まだまだ日中はプラスの気温のようですよ(笑)。
Commented by d-yun5-fly-elise at 2007-12-10 22:28
ryoさん、こんばんは。
仰るようにあの神秘的な音色はこの時期の早朝の十勝川の独特の音色かもしれませんね。
実はあの音色、密かに好きなんですよ。
もう一つ好きな音色がありました。イブニング、冷え込み始めた本流に立ち込んでいると川が凍り始める結晶の音が聞こえてくる事があります。こちらはどちらかというとサラ、サラ、サラという音に近いかもしれません。

この日はいくつかのポイントを巡ったのですが、私はこの場所でしかアメマスに出会えませんでした。やはり先週良かったからといって今週も良いとは限らないものなのですね。そんな事を改めて実感した次第です。
Commented by d-yun5-fly-elise at 2007-12-10 22:33
jockさん、こんばんは。土曜日はお疲れ様でした。
3週に渡りお付き合いいただき、ありがとうございました。
あと例のリーダー、ありがとうございました。あまり見たことがないものでしたが、今度フィールドで使ってみます。
上流域での練習、頑張って下さいね。来春に再会出来るのを楽しみにしております。
Commented by d-yun5-fly-elise at 2007-12-10 22:39
terryさん、こんばんは。
「キャバクラ・フライ(笑)」を咥えたアメマスは、やはりちょっと怖いぐらいに強面でした。もしかしたら下りのアメマスだったのかもしれません。

シャーベット状の氷、実はこれが指先に残ると本当に冷たいんです。少しずつ指先の感覚が鈍り始めます。おまけにこの日はウェーダーの足底に穴が開いたようで、ジワジワと冷たい水か浸水してきて、二重の冷たさでした(笑)。
Commented by d-yun5-fly-elise at 2007-12-10 22:44
ムラさん、こんばんは。
お会いするのは極東以来でしたね。
ムラさんの迷いは戴いたメールの文字からも溢れていましたよ。
御一緒出来て、こちらこそ、楽しい時間をありがとうございました。
帰りの車中では、ギュッと甘味の詰まったミカンを美味しく戴きました。
Commented by d-yun5-fly-elise at 2007-12-10 22:49
SHUさん、こんばんは。
冬の十勝川釣行、こちらこそお付き合いしていただきありがとうございました。ジワーッとまだ余韻に浸っています。
今回は軽い凍傷にもならず、少しホッとしております。
それにしても新しいB&W、スカジットヘッドでキャストすると凄い飛距離でしたね。ちょっと私も驚きました(笑)。
Commented by こるとれーんtone at 2007-12-10 23:32 x
yunさん、お疲れ様です。 極寒の風景も  yunさんの審美眼から投影されると 穏やかな景色と錯覚してしまいそうです ... 十勝冬行きには刻々と変わる風と氷のドラマがあるんですね。 私も綺麗なチューブフライが巻きたくなりました ^^。
支笏湖のブラウンの大方は湖水の伏流で産卵に入ったようでおとなしくなった感じがしています。
Commented by d-yun5-fly-elise at 2007-12-10 23:54
こるとさん、こんばんは。
刻々と変る風と氷のドラマ、美しい表現ですね。
確かに仰るように冬の十勝川にはそんな表現がピッタリかもしれません。この日は偶然にも風が穏やかでした。でもあっという間にガイドはガチガチに凍りつきますが・・・笑。
私はたいてい1~1.5inch程度のコンパクトなチューブフライしか巻きませんが、これがなかなか面白かったりします。とびっきり派手なカラーリングなのですがマテリアルの動きなどを考えながら巻いてみるのも、意外と冬の楽しみだったりします。
冬の支笏湖、厳しいですよね。
でも、今年は何度か足を運んでみようかと思っています。
Commented by akiranspey at 2007-12-11 00:02
YUNさん、こんばんは!!
冬の十勝、釣り人に優しい川でとても気に入りました。
でも夏の力強い流れも一度足を運んでみたいと思っています。

冬の十勝はもう一度くらいは行ける状況なのでしょうか??

禁漁のある本州から皆様の釣行記、毎週楽しみにしてますね(笑)
Commented by d-yun5-fly-elise at 2007-12-11 00:20
akiranさん、こんばんは。
あれからもうすでに2週間が経ったのですね。本当に月日が経つのが早く感じられる今日この頃です。
夏の中流域、私はレインボーには出会えませんでしたが、本流らしい魅力的で力強い流れでした。いつか機会があれば、是非御一緒しましょう。

例年だとそろそろ下流域は結氷のようです。日中がプラスの気温の日が続けば、もしかしたら可能かもしれませんが、遠出をするにはかなりリスクが高いようですよ(笑)。


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