釣り師と迷い。
それは、いつも隣り合わせのようなものであり、切っても切り離せないものである。
釣り師は迷う。
スペイキャストの釣り師も迷う。
そして、僕も迷う。
足を運ぶフィールドに選択するエリア、そして佇むポイント。
もちろんロッドの選択にも迷うし、どのラインを巻き込んだリールにするかにも迷う。
そのうえ、ポイントによってシンクティップのシンクレートの選択にも迷う。
でも、一番迷うのはどのフライをティペットの先に結ぶかだろうか。
友人は言う、
「Yunさんは、フライの選択に迷いがなくって良いよね」、と。
確かにそうかもしれない。
なにせ、僕がフィールドに着いて真っ先にティペットの先に結ぶのは、8番フックに巻いたビースヘッドに金黒シェニールのウーリーだからね。
ヘビーウェイト仕様のこのフライ、本流や湖の鱒にはかなりウケが良いようで、僕の中ではある意味パイロット的な役割を果たすフライのような存在であったりする。
もちろん幾つかのバリエーションはあるのだけれども、やっぱり僕の中では一番信頼のおけるフライなのであり、だから、僕はフィールドを目の前にして少しでも不安を減らすというか迷いを払拭するために、このフライをまず手にとって真っ先にティペットの先に結ぶのかもしれない。
そんな訳で、僕のヨレヨレというか革の艶をほとんど失ったようなガサガサの手触りがちょっと物悲しさや哀愁を感じさせるホイットレーのフライワレットを開くと、半分はこのビーズヘッドの黒いウーリーがところ狭しと並んでいる。いや、このフライで埋め尽くされているといった方が正しい表現だろう。もちろん残りの半分のスペースには、あまり使われることがなく、いつ巻いたのさえ定かではないウェットフライが並んでいるのだが・・・。
でも、時々何かの拍子にふと思うことがあるんだ。本当にこれで良いのかって。
もしかしたら僕はフィールドを目の前にして、「さてどのフライにしようか」と、フライの選択を迷うという、いくつもあるフライフィッシングの愉しみの要素の中の大きな一つを、台無しにしているんじゃないかということをである。
そんな訳で、昨夜はスペイフックやウェットフック、それにアルミチューブを使い、幾つかの黒いウーリーじゃないフライを巻いてみて、フライワレットの残り半分の隙間を埋めてみた。
今度フィールドに立つ時は、ニヤニヤしながらフライの選択に迷う事にしよう。
そしてここぞという大きな鱒がいそうな流れの中で、その中のフライの一つをゆっくりとスイングさせるのだ。
でも、ひととおり流し終えた後で何も鱒からのコンタクトがなかったりすると、「やっぱり黒いウーリーにしておけば良かったのかなぁ」という後悔がついてくるのは目に見えているのだけれども。
original photo by Mr.ABU
今日のBGM : Ministry / Lies Lies Lies