友人と訪れた、火曜日の午後の本流。
国道から砂利道を進み、水田の横にあるほんの数台の車しか止められない小さな駐車スペースに車を止め、そこから本流までロッドを片手にゆっくりと歩く間に、僕らは毎回1本のサクランボの木の下を通る。そんな春には小さな白い花を咲かせていたサクランボの木に、昨日は沢山の赤い実がたわわにぶら下がっていた。
ちょっと手を伸ばせば届きそうな赤い実の幾つかを手に取り、口の中に放り込んでみる。
このところの降雨の少なさからだろうか、しっかりと熟したそのサクランボの実は、ジワーッと口の中で甘味が広がり、僕は夏らしい甘酸っぱさを感じる。
不思議なもので、僕の中でサクランボを食べるとなぜかチェリーパイの事を思い出す。
きっと学生時代に観た、David Lynch監督の映画「Twin Peaks」に出てくるチェリーパイの印象が強かったのだろう。だからサクランボの季節になると、時々ふと思い出したかのように無性にチェリーパイが食べたくなるんだ。
久しぶりに本流でお会いした
yusukeさんのうしろ姿を見ながら、ゆっくりと午後の本流を釣り下った。曇り空の本流に吹く風は、時々夏らしい匂いを僕のもとまで運んでくる。
それにしてもずいぶんと水位が下がったものだ。これぐらいの水位になると僕はType3にするかType6にするか、本当にティップの選択で頭を悩ませる。
随分と釣り下った。ここまで来る間に数回おそらくレインボーと思われる水面からモコッと出るライズを見たけれど、相変わらず僕のスイングさせるフライには何の変化も起こらない。
そして期待したイブニングの第3セクション、速い瀬の中で1度だけメンディングしたラインを通じて「ゴ、ゴン」という鱒らしいアタリがあったけれど、それはフッキングには至らなかった。
相変わらず僕の中では夏らしいサクランボの甘酸っぱさが、チェリーパイの思い出と共に余韻のように残っていた。
今日のBGM : TRENTEMOLLER / Miss You