最初に出会った釣り人は、僕にとってはトロフィーサイズのブラウンに出会ったという。
そしてもうひとりの釣り人は、大きな鱒に何度も首を振られて逃げられてしまったといった。
そんな話を聞くと、支笏湖の湖畔で僕はなかなか3Xのティペットにフライを結ぶことが出来なかったんだ。
いったい何回やり直したのだろうか。
札幌の雪祭りも始まった2月最初の火曜日、とても一年で一番気温の下がる2月とは思えない陽気に誘われて、僕は支笏湖の美笛河口に佇んだ。
ほのかな陽気、キラキラと湖面を照らす2月の太陽、遠くで聞える名も知れぬ野鳥の囀り、それに柔らかい波音とすべてが何も変わらないかのように穏やかだった。
期待がなかった訳じゃない。15feetのARCでキャストした黒いフライをじっくりと沈める。
そして頃合を見計らって何かを慎重に確かめるようにゆっくりとリトリーブ。
でも、何も起こらなかった。いや、もしかしたら何かが起こっていたのかもしれない。僕の中で何かが少しずつ溶け出すかのように。
そして、今年も僕の支笏湖での鱒釣りが始まった。
今日のBGM:Portishead / All Mine
/ Wandering Stars
/ Hamming
/ Only You