
何度めかのスペイキャストで、やっと僕のイメージ通りにアンカーが打てて、派手な蛍光イエローのスペイラインがシュル、シュル、シュル~と気持ちよく対岸に向けて伸びていった。
思い描いた通りにキャストが出来た時には、たいていの場合、シナリオ通りの展開になるものだ。
ゆるい流れの中で少しずつラインをリトリーブしていると、微かな前アタリの後、グゥンという鈍くて重量感のある衝撃が僕の手に伝わった。水面に突き刺さったラインの先で浜益川のサーモンが何度も頭を振っているのがリアルに読み取れる。そして間髪入れずサーモンは一気に下流へと疾走した。
急いで僕はリールに余った手元のラインを巻き取り、リールファイトに備える。ブレーキの円形のダイヤルを左手で最大限に絞り込んで、次のサーモンの力強い疾走を待った。
サーモンがさらに下流へと走る。また、さらに下流へと走る。僕がリールの異変に気付いたのは、サーモンがかなり下流へと下がった後だった。ふと見るとブレーキがフリーになっている。仕方なく僕は指をハンドルにぶつけないように注意しながら、右手で逆回転するリールのスプールをパーミングする羽目になってしまった。
サハリンにシーマを釣りに行く前に買ったこのリールだけれども、2年前にリールのブレーキ自体が壊れて英国で修理を受けてきた。そして今度は、スプールの中にあるクラッチの部分がどうやら壊れてしまったようだ。何度も分解して汚れを取り除いてみたりしたんだけれど、やはり同じ症状が出てしまう。さて、困ってしまった。パーミングでやり取りするのも悪くはないけれど、精神衛生上はあまりよくない。このリール、ブレーキは甘いけれどシンプルなデザインと心地良いラチェット音が結構気に入っていた。また、パーツを取り寄せるしかないか・・・。