普段あまり耳にしない音、何かが唸るような低周波の音、そんな異質な音が僕の耳だけではなく、からだ全体に響いてきた。
ふと見上げると、そこにはコンクリートの塊で出来た要塞のようなダムが聳え立っていた。
カラフトマスの帰りに立ち寄った川、上流には、周囲の美しい景観とは異なる、巨大な建造物が横たわっていた。ダムを真下から見上げたのは初めてだった。不気味というか恐怖。何とも言えない威圧感。そんなものをそれは僕自身を含めた周囲に容赦なく放っていた。
居心地が悪かったし、気分が悪かった。今すぐにでも、その場から離れるべきだと、僕の中から何かしらの信号が出されていたのを感じた。
ここに来る前、ちょうど渇水したサンル川のほとりを車で通ったのを思い出した。橋の掛かっていない橋げた。道路よりも高いところに見える車の走っていない造りたての真新しい道路。ダム建設は着実に準備が進んでいる。きっとここはサンルダムの下流になるのだろうか、すると、さっき通った美しい景色はサンルダムの下に沈むのだろうか、そんな事を車の中で友人達と話していた。本当に必要な物なのだろうか。目の前に聳え立つ不気味で不自然な建造物があそこにも本当に必要なのだろうか、いろんな側面からもっとよく議論するべきなんじゃないか、そんな事をふと考えてしまった。
今日のBGM:LAIBCH/WAT