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2005年 07月 15日

<Vol.80>trailer

 海の色がそこだけ変わっている。20m先にはカラフトマスの群れがいることは、はっきりとしていた。

 いつもは1X12feetのリーダーの先に真赤なゾンカ-タイプのカラフトマス用フライを結ぶのだけれども、その時はなぜか真赤なフライのゲーブに1.5mほどの10lbのフロロティペットを結んで、その先にもう1つ真赤なフライを結んだ。トレーラーの釣り。ある意味、僕にとっては禁じ手。

 渚滑川でシンクティップラインでウェットの釣りをした時、ドロッパーとリードの2つのフライに同時にニジマスが掛かってしまい、僕は限りなく嬉しい悲鳴をリールの逆回転音に負けないぐらいに上げた事がある。30cm+30cm=60cmと、単純にいかないのは十分わかっている。でも、もしかしたら、同じ事がカラフトマスでも再び起こるんじゃないかと、僕は密かに期待していたのかもしれない。

 1投目。2つの真赤なフライは群れの向こうに着水した。数秒間待ってから、ゆっくりとリトリーブ。2つのフライは何事もなかったように僕の足元に戻ってきた。前を見ると、まだ黒い塊はその場所にとどまっていた。ゆっくりと深呼吸して、2投目。同じ所に2つのフライは着水した。心の中でゆっくりとカウントダウンして、リトリーブを始めた。3回目にラインをリトリーブした時、グゥ~ンとラインに重みを感じた。僕がニヤッと心の中で笑った瞬間、その重みは2倍いや3倍になった。

 何が起こったのか分からなかった。ある意味、僕はパニックになっていた。手元にあったラインは一気に出て行き、ソルト用のシャンパンゴールドのリールは、見た事もないぐらいのスピードで逆回転していた。ブレーキなんて効きやしない。おまけに、セミダブル8番のロッドは、これ以上は曲がらないというぐらいひん曲がって、ピキピキとバットから嫌な音を放っていた。前を見ると、海中に突き刺さったラインの先に、偏光グラス越しに2つのギラッとするものが見えた。

 僕がどうする事も出来ないファイトはどれぐらい続いただろうか。諦めて、僕がラインを握ろうとした瞬間、ラインを通じて感じる鱒の重みはいつもの重みに変わった。気が付くと、僕の心臓が凄い早さで鼓動を打っていた。

 カラフトマスのトレーラー釣り、僕はこの事があってからはやっていない。いつかは鮭釣りの時にもトライしてみたいと思っていたが、それだけは決してやるまいと固く心に誓った。3年前の8月末夕刻、知床モイレウシでの出来事。
<Vol.80>trailer_d0029241_18131389.jpg

今日のBGM:KMFDM/ANGST

by d-yun5-fly-elise | 2005-07-15 23:16 | salmon fishing | Comments(6)
Commented by tokyo_terry at 2005-07-15 23:27
こんばんわ!Yunさん。
そんな事って、実際に起こり得るんですネ。
画像のようなサイズが同時に二尾も掛かるとスゴい事になりそうですネ。
全く想像もつきません。
かなり、CRAZY〜☆
Commented by SHU at 2005-07-15 23:33 x
Yunさんterryさんこんばんは!
うひょーっ!そんな事あるんですね!!竿が折れちゃうかも。
スレ掛かりでもかなりのものですが2匹だと。。。

表紙の自己紹介の画像これなんですね!
明日良いことあるといいなー。(独り言です)
Commented by taros_magazine at 2005-07-16 18:42
もう想像もできない世界で…ここ数日のyunさんの記事には、ただただ溜息です
でも「どうすることもできないファイト」は体験したことがありますよ。#3のライトラインに鮭!のような(笑)イワナが掛かったときですけど…
それにしても、こんな釣りを体験したら、もう後戻りできなくなりそうですが、「決してやるまいと固く心に誓った」というところに、yunさんの優しさを感じました

Commented by d-yun5-fly-elise at 2005-07-16 20:39
terryさん、こんばんは。
当の本人も、まさか2尾も掛かるとは思っていませんでした(笑)。
カラフトマス1尾でも、かなりのファイトですから、2尾だとロッドがちょっと持ち堪えられません。本当に、想像を絶する事が起こっていました(笑)。
Commented by d-yun5-fly-elise at 2005-07-16 20:46
SHUさん、どうもです。今日の本流はどうだったでしょうか。
多分、1尾のカラフトマスはスレ掛かりだったと思います。1尾はちゃんと口にフライが掛かっていました。2尾ともスレ掛かりだった事を想像すると、恐ろしいです。
表紙の画像は、去年のペキンの鼻のものです。3年前は、申し訳ありません、デジカメ持っていませんでした(笑)。
Commented by d-yun5-fly-elise at 2005-07-16 20:57
taroさん、こんばんは。#3ラインで鮭のようなイワナですか!それも凄い事になりそうですね(笑)。5番ロッドでウェットを流していたら、そのフライに遡上してきた鮭が掛かったという友人の話は聞いたことがありますが、北海道では時々そういうことがあるみたいですよ。
決して優しくはありませんよ。無謀だと周りからは言われています(笑)。ただ、本当にロッドが折れるんじゃないかと思ったからなんです(笑)。


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