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2009年 09月 25日

<Vol.714> トータル1200kmの釣り旅、僕はトラウトバムになりえたか

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今日は僕が十勝川の畔で過ごし始めて、一体何日目になるんだろうか?
時折ふっとそんな事すら分からなくなった。
朝の4時にセットした携帯電話のアラームで目を覚まし、車の中の荷室に敷かれた寝袋からモゾモゾと這い出す。早朝の気温は、日を追うごとにその冷気で思わずブルっと身震いするぐらいにまで下がっていった。偶然にも9月の冷たい雨にはあたらなかったことだけは僕にとって幸運だったのかもしれない。
取り敢えず思考機能のかなり低下した目覚めたばかりの頭で反射的にお湯を沸かし、コンビニで買ったいくつかのパンとフレンチローストの深煎りの豆で淹れたコーヒーとで空腹を満たす。そしていそいそと車をフィールドへと走らせる毎日だった。


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中流域の目ぼしいポイントを日によって巡る順番を変え、ペリーポークからのスペイキャストからフライをしっかりと流れに馴染ませ、出来るだけゆっくりとしたスイングを心掛けながらひたすらそんな行為を繰り返す。ひと流し、ふた流し、いやそれ以上か。時にはタイプの異なるフライに結び変え、時にはシンクレートの異なるスペイラインにも変えてみる。
朝の釣りを終えるとちょっとした堤防沿いの空き地に車を止め、お湯を沸かすとレトルトのカレーなどで空腹を満たし、ゆっくりと淹れたコーヒーでもう一度気持ちを落ち着ける。キャンピングチェアーに腰掛けしばらくの間十勝の空を見上げながらまどろむと、また次のポイントへと車で移動。そんな一連の行動パターンがその日の十勝川でのイブニングの釣りが終わるまで続いた4日間だった。


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Meiserさんの工房から修理を終えて僕の手元に戻ってきたAutumnカラーのフェザーインレイが美しい14'#7/8番のMKSをバットからグンニャリと曲げ、ロッドにセットされたブレーキを最大にまで絞り込んだHardyのTHE ST JOHNから、キンキンに乾いた高音の悲鳴にも似た逆回転音とともにラインを引き出していき、ウェーディングした僕をてんてこ舞いにするような十勝川の本流レインボーに出合いたいという想い。そんな想いだけで僕はある意味どこか日常の感覚が少しずつ麻痺していくのを感じながら十勝川本流に連日足を運んでいたのかもしれない。


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十勝川で過ごした4日間、時には札幌や旭川から足を運んで来た友人と時間をともにする事があった。そういう時には、釣りの合間にちょっとした贅沢な食事を一緒にとったりする。実はこれも僕の釣り旅にとってはとても素敵な時間のように思えるのだが、ただ一日だけ札幌から来た友人と帯広市郊外の安宿に泊まったことだけは、もしかしたら僕のこの釣り旅のリズムというか歯車をほんの少し狂わせたのかもしれない。久しぶりにお風呂というものに入り、柔らかいベットの上で手足を存分に伸ばして寝る。これは僕に普段滅多に意識しない幸せというか心地良さのようなものを改めて再確認させ、ついには僕を非日常的な釣り旅から普段の生活スタイルにほんの少し引き戻させるものだったように思う。


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きっと今回は巡り合わせがよくなかったんだろう。それともあの十勝川の強くて速い流れの底までフライを送り届けられなかったからなのだろうか。
とうとう4日目の最後のキャストからフライがスイングを終えて僕の下流に戻ってきても、十勝川のグッドサイズの本流レインボーは僕には微笑んでくれなかった。

今でも僕の中で今回の長い釣り旅の不思議な時間感覚が、どこか余韻のように身体の片隅でくすぶりながら宿っている。こんな感覚に今度はいつ浸れるのかは皆目見当がつかないけれど、もしもチャンスに恵まれればもう一度浸ってみたいと思わせてしまう魅力は充分過ぎるほどあるのかもしれない。
そんな僕はふと思う。この1週間の釣り旅で、僕はほんの僅かでもトラウトバムになりえたのかって・・・。


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by d-yun5-fly-elise | 2009-09-25 22:39 | slow fishing | Comments(8)
Commented at 2009-09-25 23:42 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by B-R-Bros at 2009-09-26 16:25
yunさん、こんにちは。
年に一度くらい、いや、2.3度はすべてを忘れて没頭する釣り旅がしたいですね。
まっとうな社会生活をしていると、まとまった時間も取るのも難しいですが、
僕の場合、北への釣行は、納得できるまでの釣りができずに次回に持ち越しになってしまうことが多いように思います(笑。
課題が残って、まだまだ次がある、ってことで楽しみでもあるのですが・・・
Commented by yanbaidesu at 2009-09-26 20:15 x
こんばんは。
僕の場合は結構、トラウトバムのような釣りになっているような感じがしますね。
朝食はコンビニのパン、昼は抜き、夜はお酒でバタンキューみたいな、、、、
 多分YUNさんは、僕から感じ取っていたんじゃないかなーって、、、、思ってます。(トラウトバムていうよりただの貧乏かも、、、?)
 YUNさんもそんな釣りをする時があるんだーって、ちょっとばかし驚いています。
北海道に行くと必ず観光はしようと思うのですが、いつも釣りばかりで終わってしまいます。やっぱりバムかも?
 また11月の最終日頃、検討中です、またよろしくお願いします。けど恥ずかしい話、お財布にはキツイですね、、、
Commented by abu-z4 at 2009-09-26 21:22
Yunさん、こんばんは。
先日はお疲れさまでした。
日曜日の早朝、音更の道の駅でお会いした時は、確かにトラウトバムと言える雰囲気でした(笑)
いつかまたこんな時間が取れたときには、僕もしっかりと準備をして非日常の世界の中で、どっぷりとトラウトフィッシングに浸かってみようと思います。
ただ僕の場合、その後ちゃんと社会復帰ができるのか心配ですが(笑)
Commented by d-yun5-fly-elise at 2009-09-27 18:16
鍵コメさん、こんばんは。
お久しぶりです。お元気そうで何よりでした。
そうですか。ご長男さんまで誕生されましたか。それは本当におめでとうございます。家族が一人増えると、なかなか釣りには行きにくくなりますでしょうが、いつの日かご長男さんとも一緒に釣りに行ける日がやってくると良いですね。
Commented by d-yun5-fly-elise at 2009-09-27 18:24
Ryoさん、こんばんは。
普段の釣りの時にも、すべてを忘れて釣りに没頭しているのですが、こんなに長く釣りに浸るというか没頭したのは初めてなのかもしれません。私にとっては貴重な体験でした。Ryoさんは何度も海外にも行かれているので、きっとこんな体験は何度もされているんでしょうね。
納得出来るまでの釣りというのは、私にとっても難しいのかもしれませんが、例え出来たとしても、その効果はなかなか持続しないようです(笑)。
北への釣行、今年は晩秋から初冬の十勝川でお会い出来ると良いですね。
Commented by d-yun5-fly-elise at 2009-09-27 18:37
yanbaidesuさん、こんばんは。
お財布には厳しそうですが、今年も11月末の十勝川で再会出来るのを楽しみにしております。
これまで結構ハードというかタイトなスケジュールで道内の釣り旅はしていましたが、こんなに長く休みが取れて釣りに出かけられたのは、子供が少し大きくなって手を離れ始めた事もひとつの要因かもしれません。もちろんこんな長い休みが取れる環境にも感謝ですが…笑。
車中泊、実は意外と好きなんですよ。夕食はコンビニのお弁当で済ませ、ビールで喉を潤し、バーボンを流し込んだら、いとも簡単に深い眠りにつけます。
何年か前の晩秋でしたが、十勝川下流域で1週間近く車中泊されながら道内を釣り旅されていたルアーの本波さんにお会いしたことがあります。この時はちょっと羨ましく思えました。
Commented by d-yun5-fly-elise at 2009-09-27 18:43
ABUさん、こんばんは。
十勝川では、お疲れ様でした。素晴らしいレインボーとの出会いだったようですね。
あの時は携帯電話にセットしたアラームが鳴る前に電話をいただいたので、まだ意識が充分に覚醒していませんでした。それに暫らくお風呂というものにも入っていなかったので、ずいぶんと酷い格好のところを見られてしまったかもしれません(笑)。
またよろしくお願いいたします。
P.S.次回は宿には泊りませんよ(笑)。


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