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札幌市在住Yunの北海道をメインフィールドにしたスカジットキャストによる釣行記。

by d-yun5-fly-elise
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<   2007年 09月 ( 12 )   > この月の画像一覧
<Vol.506> 予期せぬ出会い
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心地良い秋空の下で、偶然に出会った彼女。

いかにもふくよかであり、尚且つグラマラスなボディに走る一筋のオレンジ色のライン。

鮮やかに染まる頬のオレンジ。

そして深いオリーブ色の背中との見事なコントラスト。

それは今日の尻別川での僕にとっての予期せぬ出会いそのものだった。
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by d-yun5-fly-elise | 2007-09-30 22:06 | spey fishing
<Vol.505> ハイウェイは激しい雨
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雨で水浸しになった路面。
そんな中、不安定なステアリングを握る。
雷鳴と共に、フロントガラスと幌を大きな雨粒が何百、何千と大きな塊のようになって激しく打ち鳴らした。
防音の効かない車内は、そんなノイジーなサウンドで満ち溢れ、バッハの無伴奏チェロソナタのBGMは、いつしかそんな音の中に埋もれていったのだった。
火曜日の午後、小樽へと向かうハイウェイの上での事。
今年の"elise de salmon"は、激しい雷雨との遭遇で始まった。


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当丸峠を越える辺りで雨は小振りになっていく。
やがて雲の隙間からは青空が顔を覗かせ、大きな虹までもが幾つも出ていた。
風は出し風、雨上がりの古宇川河口の雰囲気は悪くはなかった。
河口には浮きルアー釣師の姿が4名、とにかく打ち寄せる波はサーファーの姿を数名見かけるぐらい高くて、僕は河口に立ち込む事すら出来なかった。
とにかく、ルアー釣り師の横に入れてもらい、Type1のシューティングヘッドでアンダーハンドキャストを試みる。
ランニングラインを握る指で、積丹のサーモンの強烈なバイトを期待したけれど、この日も僕はこの指で何も感じる事はなかった。
そんな中でもルアー釣り師は僕が見ている中でも2尾のフレッシュなサーモンをキャッチしていた。1年振りに見る積丹のサーモンはなぜかオホーツクのサーモンよりも小さく小振りに見える。不思議なものだ。そんな中、波間でも数匹のサーモンの姿。でも、跳ねもなければモジリもない。
海水温の影響なのだろうか。今年のサーモンの回帰は幾分遅れているような気がする。
傾きかけた夕日とキラキラと輝く砕けた波で泡立つ海面を見ながら、もうすぐこのフィールドも釣り人の姿で溢れかえるのだろうなぁと思った。


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by d-yun5-fly-elise | 2007-09-27 19:57 | salmon fishing
<Vol.504> blueはブルー
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相変わらず、釣れない鱒釣りが続いている。
まぁ、いつもの事だけれど。

右岸からの腰上まで立ち込んだスネークロール、僕はいったい何回溜息をついただろうか。
まぁ、いつもの事だけれど。

鱒からのコンタクトがないと何度もフライを取り替えてみる。
まぁ、これもいつもの事だけれど。

帰りの峠道は、うんざりするほど車で混みあっていた。
連休最終日、まぁ、これも仕方がない。

9月最後の連休の月曜日、僕はスペイロッド片手にいつもの尻別川本流に佇む。
秋空の下、風はこの上なく秋らしく吹き、赤トンボたちの舞う姿を沢山見かけた。
本流へと続くあぜ道の両脇に広がる田んぼでは、農家の方達が家族全員で稲刈りに精を出していた。綺麗に刈られた稲の姿には、どこか寂しさすらが漂っているように感じる。
本流は若干の濁りは残すものの、相変わらず強くとうとうと流れていた。
とにかく今日は久しぶりに本流でゆっくり過ごそうと思った。
相変わらずこの日も遠くから蒸気機関車の汽笛の音が風に混じって響いてきた。

今日は秋空の下、本流でのんびりしようという思いとは裏腹に、なぜかすべてのリズムがちぐはぐだったように思う。
それが何に起因するかはまるで見当もつかないのだけれど、とにかく気分だけがなぜか晴れなかった。
そんな日に、鱒に出会えるわけもなく、
相変わらず僕の頭上に広がる秋空だけはこの上なくブルーだった。


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by d-yun5-fly-elise | 2007-09-24 21:21 | spey fishing
<Vol.503> 日曜日の午後に居間のソファに腰掛けて
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僕はこんな日曜日の午後が好きだ。

南向きの小さな庭に面した窓から白いレースのカーテン越しに、
柔らかい午後の日差しが居間に差し込む。
TVのスイッチは消され、ステレオのスピーカーからも何も流れてはこない。
心地よい午後を演出するような音楽でさえもだ。
もう秋の気配がいたるところに見られるというのに、片付けられるのをすっかり忘れられた窓から吊り下げられた風鈴が時折チリンチリンと物悲しく鳴って、外では少しばかり風が吹いているのがわかる。
くたびれたソファに座り、耳を澄ましてみると、台所の方から冷蔵庫のブーンというコンプレッサーの音が聞こえてきて、その低い音に混じって、ピチ、ピチと家族の誰かがしっかりと閉めるのを忘れた水道の蛇口から10数秒の間隔で水滴が落ちる音までもが、さらに午後ののんびりとした感じを強めていたように思う。
忘れかけた頃に、家の前の坂道をアクセルを踏み込んだ車が登っていった。

こんな日曜日の午後、家族の皆が何らかの用事を足しに外へ出掛けているとなおの事良い。
僕は夕方からの仕事以外、大してする事はなかった。

この雰囲気は、何かに似てた。もしかしたら、僕がオホーツクでの釣りの帰りに立ち寄る下川町のサンル川の辺に佇むモレーナの雰囲気に似ているのかもしれない。
僕はもう一度ソファに深く腰掛け、自分で淹れたコーヒーを一口飲み、そしてタバコに火をつけた。


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金曜日の深夜、気が付くと僕と釣り仲間のBさんはオホーツクへと向かう車中の人となっていた。夜に交わした電話で、かなりハードな釣行になるかもしれないけれど、もう一度フレッシュなサーモンに出会いにオホーツクの海へ行こうということになったのだ。
状況は五分五分だった。金曜日の午前中にオホーツクに降ったバケツをひっくり返したような激しい雨がどう影響するかは、まったく予想が出来なかった。もしかしたら海は濁っているかもしれないという不安を胸に、深夜のハイウェイを車は北上する。

「もうすぐ、ロシアから目の横にブルーのアイラインを入れた美人がやってきますよ」と日焼けしたがっちりとした体格のワイルドな風貌でどこか優しさの漂う60代と思われる男性が僕らに話しかけてきた。
これは先週の日曜日に僕とhoriさんがOSJの帰りにモレーナを訪れた時の話だ。
最初は何の事だかさっぱり分からなかったけれど、数秒後にはなるほどと僕に思わせた。
彼は僕らとモレーナのマスターがオホーツクでのサーモン釣りの話をしている時に加わってきたのだけれど、彼が言うロシアからのブルーのアイラインを入れた美人というのは、つまりシルバーメタリックなボディとほんのりとブルーがかった背中とを併せ持つ銀鱗のフレッシュなサーモンのことなのだ。本州からオホーツクに来て、カラフトマスとサーモンの姿を追い求めているという彼は、この北の地にシーズン中の3ヶ月ほども滞在しているのだという。
彼はオホーツクのロシアからやって来る美人の事をありとあらゆる言葉で賞賛したあと、もう直ぐですから、きっと20日以降だと思いますよという言葉を残して立ち去っていった。
僕にはブルーのアイラインという言葉と、ロシアからの美人という言葉がやけに印象深かった。

土曜日の早朝のオホーツクの海は、穏やかそのものだったけれど、水平線の下から太陽が少しずつ顔を覗かせ、辺りの様子が少しずつはっきりと分かるようになると、やはり相当な濁りが海に注ぎ込んでいたようだった。
そんな中でもサーモンの姿を求めて、すっかり最近ではお世話になっているScottの15ftのロッドを左背後からの強い出し風を全身で受けながら振る。
時折ドキッとするようなサーモンの派手な跳躍もごく至近距離で目にしたけれど、やはり時間と共に底荒れと濁りが海全体に広がり始めるといつの間にかどこかへと姿を消していった。
さすがにこんな日には、僕はロシアからのブルーのアイラインを入れた美人にはお目にかかれなかった。
ふと何かしら感じるものがあって横を振り向くと、僕の横でロッドを振っていた友人のロッドがバットの付け根からグンニャリと曲がっていて、海面に突き刺さったラインの先ではサーモンが全力で疾走している。
オホーツクの風は相変わらず強く吹いていた。

そんな事を思い出しながら、日曜日ののんびりとした午後、僕は居間のソファに腰掛ける。
あぁ、やっぱりほんの少しだけでもいいから、もう一度ロシアからやって来るとびっきり美人の銀鱗のサーモンに触れてみたかったなぁ。


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by d-yun5-fly-elise | 2007-09-23 22:19 | salmon fishing
<Vol.502> ほんの少し足を伸ばして
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先週の金曜日の夕暮れ、汗ばむぐらいの暑さの中、僕は渚滑川の畔に佇んでいた。
というのも、オホーツクでのサーモン釣りの合い間だったのだけれど、
なぜがせっかくここまで来たんだからと、渚滑川の様子を見ておきたかったからだ。

いつもの年ならば、5月か6月に数回は訪れる事が多いのだけれど、今年はなぜか一度もこの川を訪れる事はなかった。川がどんな様子かいつも気掛かりではあったのだけれど・・・。

秋の訪れを間近に控えた渚滑川は、僕の見覚えのある渚滑川とは違い、ずいぶんと減水が進んでいるようで、どこか川そのものが小さくなったような気がした。
水面からたっぷりと顔を出した大きな石がゴロゴロと点在する河原伝いに13ft、#5/6のスペイロッドを手にゆっくりと山肌から照りつける西日を感じながら釣り下る。
浅瀬では尾鰭や背中が白くなったカラフトマス達がペアとなり、一生懸命産卵床を作ろうとしていた。そんな横を彼らの邪魔しないようにゆっくりと歩く。
僕には鱒のライズは見つけられなかった。
でも、時々元気の良い小さなレインボーが僕のOSPを沈み石の横で見つけてくれた。

たった2時間の渚滑川での釣りだったし、グッドサイズのレインボーには出会えなかったけれど、やっぱり少し足を伸ばして良かったと思える金曜日の午後だった。
とにかく河原を吹く風が気持ちよかったからね。


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by d-yun5-fly-elise | 2007-09-21 22:08 | spey fishing
<Vol.501> 本流らしい本流
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連休中に降った雨がそうさせるのだろうか。
減水が進んでいたお気に入りの本流は幾分水位が増して、
なぜかいつもの力強さを取り戻しているように僕には思えた。
本流はやっぱりこうでなきゃという想いと同時に、
弱っていたものがいつしか息を吹き返したかのような安堵感めいたものを僕は感じる。
ほのかなオリーブ色の流れ。
そんな火曜日の午後の尻別川だった。


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4日間もオホーツクの海で過ごしておきながらも、なぜか本流の畔に佇みたかった。
とにかくいつものリズムで何かを確かめるかのようにスペイロッドを振りたかったことに違いはない。僕は友人を助手席に乗せ、ゆっくりと峠を下った。

上流からの少しばかり肌寒い、どこか秋の訪れを感じさせるような気まぐれな風が吹いていた。
本流の畔の稲はすっかりこうべを垂れ、その黄金色の実をたたわに実らせている。
伸びたススキの穂が時折り激しく風に吹かれて大きく揺れた。
そしてその度に、本流の畔を囲う木々からはパラパラと幾枚かの葉が散り、本流の上を彷徨うがごとく舞うのだった。
僕のスペイキャスト自体はそれほど悪くなかったと思う。
でも、残念ながら本流を泳ぐ鱒からは何のコンタクトもなかった。
同行した友人には、本人曰く小さなアメマスからの挨拶があったそうだ。
そういえば、第1セクションで何度かアメマスとおぼしきライズを力強い流れの上に見たのを思い出した。それはトルクフルな流れの中に立ち込んだ僕の直ぐ横で起こったものだから、あまりにも近すぎて僕を一瞬ドキッとさせるには十分だったもののように思う。

ひと通りいつもの本流を流し終えると、すっかり本流には夕闇の足音がほんのそこまで近づいて来ていたように思う。
フッと大きく息をして、リールにスペイラインを巻き込んだ。
僕にはやっといつもの僕なりのペースが戻ってきたように思えた。


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by d-yun5-fly-elise | 2007-09-19 21:31 | spey fishing
<Vol.500> Okhotsk salmon trip・・・オホーツクの海での4days
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                  original photo by Mr.kuroda


紺碧のオホーツクブルーをしたためたかのような美しくって波の穏やかな海が僕の目の前に広がっていた。
カモメ達が秋めいた空をゆっくりと舞い、おまけにその空はどこまでも抜けるように高い。
たっぷりと潮の香りを含んだ優しい風が背後のススキの穂をたなびかせている。
時折り遠くから聞こえてくる夏ゼミの鳴き声がどこか夏の余韻を僕に感じさせた。
オホーツクの海では初めて目にする光景だったと思う。
僕の目の前に広がる大きなワンドでは、ワンドの中に入りこんだオホーツクのサーモン達がまるで水族館のイルカショーのように、何匹もが同時に海面からの跳躍を繰り返していた。

ランニングラインをスローにかつ慎重にリトリーブする指に突如感じる、まるで何か得体の知れない大きな塊にでも引っ手繰られるかのような強い衝撃。
ガッン。
これまで僕の知っている限りにおいてのサーモンのバイトは、大体にしてフライをテイクすると何度かその場所でグングンと全身をくねらせた後、一気に猛烈な疾走へとシフトチェンジするのだけれど、でもそのサーモンはこれまでとちょっと様子が違った。なんの躊躇いもなく、水面下でギラっとそのメタリックな輝きを僕に見せつけると、一瞬スレ掛りなんじゃないかと僕に思わせるぐらいのスピードで沖へと疾走していった。シャンパンゴールドのリールが奏でるミュートされた唸るような逆回転音。サーモンの疾走はリールから白いバッキングラインが20mほど出たところでやっと止まった。しかしその後もサーモンの躍動感とパワーは終わりというものを知らない。
どれくらいの時間サーモンとのやり取りを繰り返しただろうか。千葉から来られたという友人のネットに、バーブレスフックがいつ外れるかとヒヤヒヤしながら、何とか収まったのは僕がこれまでにオホーツクの海で出会ったサーモンの中で一番フレッシュじゃないかと思われるらいシルバーメタリックなボディが眩しいメスのサーモンだった。おまけにオホーツクの海の色をそのまま映しだしたかのような美しい背中を併せ持っていた。

そんなオホーツクのサーモン達に僕はオホーツクに滞在した4日間で幸運にも4尾に出会うことが出来た。


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記憶というものは、実に曖昧である。
あるものは、まるで何かの記録映画のように鮮明に記憶されいると思っていても、時間と共に多分に記憶という巨大なプールの中で修飾され、あれ部分だけが異様に増幅していく。
また、残念な事なのかもしれないけれど、時には時間と共に写真の色がその鮮明さを失っていくように徐々に風化して、記憶という巨大なプールの奥底に沈んでいくものもあるかもしれない。
実は事細かに記憶していると思っていても、それらは次第に混じりあって細部が融合していき、やがて大きな一つの塊のようなものになっていくのかもしれない。
もしかしたらそれは自然な成り行きなのかもしれないけれど、出来る事なら僕はそうさせたくない。だから気付いた事、感じた事、見た事、触れたものをそっと写真や文章に残しておきたい。
出来る事なら、それらが色褪せないうちに。

そんなオホーツクの海で過ごした4日間、それも時間が経つにつれて残念ながら少しずつありありとした鮮明さや色彩を失い始めて、単純な楽しかったという大きな一塊になろうとしている。


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オホーツクの海で過ごした4日間、突如激しい雨に見舞われた日もあれば雷鳴が遠くで轟く日だってある。やがてどんよりとした厚い雲に空が覆われた日もあれば、晴れ渡る青空の下、頭上の太陽が眩しくってオホーツクの海に広がった点在する昆布根の様子や岩盤の地形が手に取るようにはっきりと分かる日だってある。
風が強い日もあれば弱い日だって、それに風向きだって日によってコロコロと変わる。
すべての条件が同じという日は、決して二度とは巡ってこない。
でも、2日目の朝に僕が目にしたオホーツクの朝焼けだけは、忘れられないぐらいにオレンジ色が眩しかった。そんな朝焼けのオレンジ色が海に映し出されている中で友人達がサーモンの姿を求めてロッドを振っていた。


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深夜のハイウェイをひたすら北上し、あと小一時間もすればオホーツクに辿り着くという頃になって車のフロントガラスを大きな雨粒がパチパチとハイピッチで叩き始めた。ヘッドライトに照らされる真夜中のアスファルトも黒く輝いている。天気予報では晴れなのに。
こうなると、不安というものが少しずつ僕の中で増殖し始める。
でも、いいさ。だって4日間もたっぷりと時間はあるのだから。
車のスピーカーから流れてくるNHKのラジオ深夜便のエリック・クラプトン特集、"I Shot the Sheriff"を命一杯にボリュームを上げて一緒に口ずさんでいた。
初日の午前中、やはり雨が降り始め、分厚い幾重にも重なった真っ黒な雷雲がどんどんとこちらへと近づいてくる。遠くで雷鳴も轟いた。
そんな中で僕の15Ft #10番のロッドをグングンとバットの付け根から撓らせたのは、口の先にほんのりと紅をさしたかのようなオスのサーモンだった。これがオホーツクの海で2007年の9月に最初に出会ったサーモン。とにかくパワフルそのものだった。


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キャンプ場の端に停めた車の後部座席のシートを倒し荷室からつながる寝床を作り、シュラフを広げた。真っ暗なキャンプ場にポツンと一台の車。すでに辺りは闇に包まれ、頭上には満天の星空が広がっていた。明日はきっと晴れるのだろう。今日と同様に良い釣りが出来るといいのだけれども。そんなことを考えながらステンレス製のマグカップにお気に入りのシングルモルトを注ぎ、そして今日一日の事ゆっくりとふりかえった。やはりお昼近くなるとサーモンの姿というか跳躍を見かけなくなった。きっと沖へと離れたのだろう。まぁ、いいさ。明日はゆっくりと海に出かけよう。そう思い、荷物の中に詰め込んできた小説を引っ張り出し、少しだけ読み進んで疲労の中で、深い眠りに落ちた。


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朝の4時にセットした携帯電話のアラームが車内に響く。
予想通り、2日目の朝は美しい朝焼けがオホーツクの海に広がっていた。
眠い目をこすりながら、ゆっくりと目覚めのコーヒーを淹れる。
とにかくいいコーヒーの香りだった。


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2日目は2尾の銀鱗の美しいメスのサーモンに出会う。
そんなに沢山のサーモンのバイトがあるわけではないけれど、とにかく午前中はサーモンの姿を捜し求めてオホーツクの海岸を彷徨った。
夏を思わせるぐらい暑い一日はあっという間に過ぎ去っていく。


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3日目は朝から淡い雲がオホーツクの空に広がっていた。実感はないけれど低気圧の前線がゆっくりと北上していて、午後から天気は崩れるという。
そんな中、苦手な風向きの中で何度も何度もキャストを繰り返したんだと思う。
それにしても僕が出会ったメスのサーモンは、触れることが躊躇われるぐらいに、この上なく眩しくて美しかった。彼女が身に纏った銀鱗がパラパラと剥がれそうだったし、とにかくその背中は青かった。
友人は言う、「この果てしなく広がる北端の地、オホーツクの青い海で、たった一尾のこの美しい宝石のようなサーモンとの出会いだけで十分満足だし、これまでの事が報われるものだ」と。
僕も心の底からそう思う。そして僕もこの1尾のサーモンとの出会いで、今回のオホーツクへの旅がすべて報われたような気がした。


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午後からは、やはり予報通り大粒の雨が降り始めた。
車の中の寝床に横になり、コンビニで買った冷えたビールを飲む。
リアゲートの窓を雨粒が一滴一滴と流れていき、キャンプ場に生える芝生が雨に濡れてその緑をいっそう鮮やかなものにしていた。
そんな窓の外の様子を見ながら、僕は読みかけの小説の続きを読む事にした。


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夕方、雨が降り止んだ合間を縫って、誰もいない海で友人がロッドを振っていた。
僕にはそんな体力も気力も、どこを探しても見つけることは出来なかったけれど、なぜか彼の気分だけはとてもよく分かるような気がした。
雨上がりの程良い湿気を伴った優しい風がオホーツクの海には吹いていた。


4日目の朝、僕がオホーツクの海で過ごす最終日だ。
でも、残念ながらこの日は何のドラマも起こることはなかった。
それにしても十分過ぎるほど満たされた4日間だったと思う。
懐かしい笑顔に楽しげな会話、この地で新しく知り合った友人達、それに出会った美しい銀鱗のサーモン達。
とにかく時間と共に色褪せてほしくないものだ。
また、来年もこの地に足を運んでみようと思う。
新しい記憶と思い出とを積み重ねるために。

                                   2007年 OSJ(後半)にて


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                  original photo by Mr.kuroda
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by d-yun5-fly-elise | 2007-09-17 20:38 | salmon fishing
<Vol.499> OSJからの便り
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                  original photo by Mr.kurisu


OSJ(オホーツク・サーモン・ジャンボリー)に参加したkurisuさんからメールが届いた。
そっと、添付されていた写真を開くと、そこには曇り空のオホーツクの海岸に横たわるオホーツクの海の色を映し出したかのようなブルーともグリーンともいえないような美しい色合いの背中とシルバーメタリックなボディのサーモンの姿が写っていた。

彼は言う、「この一尾との出会いだけで十分満足のいくものだ」と。
きっと台風の通り過ぎた直後の厳しい天候と悪条件だったのだろう。
彼の気持ちは僕にも十分過ぎるほど伝わってきたし、その想いには僕も同感だった。
彼から送られて来た写真を眺めながら、お気に入りのシングルモルトをほんの少し口に含み、この2年間のOSJでの事をゆっくりと回想している僕がいた。
秋の始まりを感じさせるどこまでも高い青空とオホーツクブルーの海、それに潮の香りを柔らかく含んだ優しい潮風。銀鱗の眩しいサーモンの跳躍。
お気に入りのシングルモルトは、なぜかいつもよりも磯の香りがほんの少しだけ強く感じられたように思えた。

僕も旅に出ようと思う。
目指す先はもちろんオホーツクの海。
そしてゆっくりと潮風の中でロッドを振ってこようと思う。
車のリアカーゴには、車中泊に必要最低限の荷物は積み込んだ。
釣りの後の夜には静かなひとりだけの車の荷室でシュラフにもぐり込み、ほのかな明かりの下で村上春樹の小説でも読もうと思う。
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by d-yun5-fly-elise | 2007-09-12 21:07 | slow fishing
<Vol.498> 波の音
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道路沿いのススキの穂がしなやかにたなびく火曜日の午後。
友人達と訪れた日本海。
今日というこの日、海へと注ぎ込む川の河口に佇み、
僕はいったい何回、この打ち寄せる波の音を耳にしたのだろうか。
決して同じ波の音は2度とは巡っては来ないその音に、そっと耳を傾ける。

相変わらず出会いたかったサーモンの姿は見当たらない。


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by d-yun5-fly-elise | 2007-09-11 22:53 | salmon fishing
<Vol.497> 台風の後の日曜日
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週末は車のリアカーゴに積めるだけの荷物を積み込んで、ニヤニヤしながらオホーツクへと旅立つ予定だった。
車中泊用の荷物は怠りなく用意したし、大事なタックルの忘れ物もない。
プラスティック製のフライボックスはサーモン用の赤いフライで所狭しと埋められていたし、
もちろん、お気に入りのシングルモルトも鞄の中にしっかりと詰め込んだ。
でも、北海道に上陸した台風だけはどうする事も出来なかった。
時にはこういう巡り合せもあるのだろう。
楽しみにしていたOSJは順延になり、僕は来年の楽しみとすることとした。

台風の行き去った日曜日、友人達と釣り人で賑わう支笏湖の湖畔に佇んだ。
水位はセミフライダービーの頃よりもいくらか減水している。
程よい西風に小波、雰囲気は悪くはなかった。
行き交う雲の隙間から太陽の日差しが差し込むと、夏ゼミの声が背後で賑やかになった。
そんな中、セミフライをスペイキャストでキャストし、湖面の上を漂わせる。

手前の掛け上がりのレーンでは、小さなアメマスかウグイだろうか、到底咥えきれないサイズのサカナが浮かんだセミフライにアタックしてくる。でも、ある程度風に乗せて遠投すると、一度だけ良いサイズの鱒が横っ飛びにセミフライにバイトしてきた。
しかし、残念ながら早合わせ。セミフライだけが宙を舞った。


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午後の2ndステージ、気の早い釣り師は静かな古宇川の河口に佇む。
夏の名残を思わせる午後の日差しは、さらに強くなっていった。
サーモンの姿も見えなければ、おのずと釣り人の姿もほとんど見かけない。
沖合いで大きな作業船がコンクリート製のテトラポットを海中に沈める作業を眺めながらキャストを繰り返した。
作業船から立ち昇る黒い煙が、のどかに潮風に吹かれて東の方へと流れていく。
もうすぐこの場所も釣り人の姿で賑わうのだろう。
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by d-yun5-fly-elise | 2007-09-10 18:55 | fly fishing