2007年 06月 05日
スペイラインを巻き込んだマーキスの乾いた逆回転音が、湖を囲む森から聞こえるセミ達の鳴き声に混じって異質なぐらいに湖畔に響き渡る。 待ちわびた瞬間。 僕の心臓は冷静なふりをしていても、どこまでも高鳴っていた。 火曜日の午後、僕が仕事場を離れる時は、強い風が駐車場の周りの樹木の葉を強いトーンで吹き鳴らしていた。エゾ春ゼミの鳴き声に見送られて、車は支笏湖に向けてゆっくりと走り出す。でも、峠を越えて湖が木々の間から見え隠れするようになると、僕らが思っていた以上に支笏湖に吹く風は穏やかそのものだった。 やっぱり本流に向かえばよかったかなぁと、ちょっとした迷いというか不安のようなものが脳裏をかすめる。 日差しの強い午後だった。予感というものがもしもあったとすれば、それはかなりボルテージの低いものだったかもしれない。とにかく準備を済ませて、友人と一緒に水位の上がった95kmのポイントにスペイロッドを片手に佇む。午後の支笏湖には、強まったり弱まったり、おまけに風向きがコロコロ変わるといった釣り人泣かせの気まぐれな風が吹いていた。 気まぐれな風に惑わされながら、95kmのポイントで僕は右や左へと幾つかのステージを彷徨う事になる。 時計の針はすでに2時を回っていたんじゃないだろうか。普段めったに乗らないステージで、右からの風を受けながらスペイキャスト。フォームとディアヘアをmixした2006'versionのセミフライが横からの風に乗って30mほど斜め前方に着水する。きっと程良い風と波がステージの上の僕の気配と3Xのティペットの影を隠してくれたのだろうか。ヨッコラショとステージの上に腰掛けふと前方を見ると、バシャっという水飛沫と共に僕のセミフライが水面下に消えた。 「デタァー」、きっとそう心の中で叫んでいたんだと思う。 慌ててロッドを起こし、左手に持ったラインを引く。 ロッドを持った右手とラインを握った左手にはしっかりと鱒のかなりの重量感を感じた。 一瞬の間をおいて、鱒は急浮上。そして波立つ湖面の上で1mほど華麗にジャンプした。 支笏湖のレインボー。 頭上に輝く太陽の日差しを浴びてギラギラと眩いシルバーメタリックのボディを僕の目にしっかりと見せつけるかのように、そのレインボーはさらに4度ジャンプを繰り返した。 そりゃ、もう、心臓はドキドキ。僕は息をする事すら忘れていたのかもしれない。 レインボーの沖へと走る疾走をリールの乾いた逆回転音と共になんとかいなし、ヨレヨレのインスタネットに収まったのは、44cmの支笏湖の水の色を映し出すかのようなグリーンバックのレインボーだった。ホッと息をつくと同時に、そのギラギラとしたメタリックボディに無駄というものを一切削がれた美しさを感じる。 レインボーの口の中からそっとセミフライを外し、6月の支笏湖に鱒がゆっくりと戻っていくのを見届けた。 その後同じステージで湖面に浮かんだセミフライに突如鱒のバイト。バゴッとブラウンほどの派手さはない水飛沫。おそらくレインボーだろう。これはあまりにも不意な出来事だったので、僕はすっかり早合わせ。一瞬、ラインとロッドに鱒の重みを感じたけれど、結局セミフライだけが宙に舞った。 普段は僕が湖畔で友人達にコーヒーを淹れる事が多いけれど、今日はオーパさんにコーヒーをご馳走になる。人に淹れてもらうコーヒーはどうしてこんなにも美味しいものなのだろうか。 不思議とレインボーに出会って高揚していた気分が、どこか少し落ち着きを取り戻したかのように感じた。 オーパさんに別れを告げ、夕刻までの間、さらに95kmの周辺をスペイロッド片手にステージからステージへと彷徨う。 気まぐれな風が、また風向きを変えた。 2ヶ所のステージで、さらに2回鱒のアタックがあった。きっとアメマスとブラウンだろう。 どちらも一瞬の間をおいて、フライが宙を舞った。でも、なぜかいくらフライが宙を舞おうが楽しくてしょうがなかった。 きっと支笏湖を彩る夕焼けのオレンジが美しかったからに違いない。 きっとそうだったんだと思う。 Rod : Winston BoronⅡx 14' 8/9 Reel : Hardy Marquis Salmon No.2 Line : Rio Windcutter 8/9/10 Leader : 3X 12' Fly : Original cicada fly 2006'version
by d-yun5-fly-elise
| 2007-06-05 23:10
| cicada fly
|
Comments(20)
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ito
at 2007-06-05 23:52
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yunさん こんばんは
今日も行かれたのですね。 自分は午後から仕事が入り午前中だけBポイントで”セミ”浮かべてました。朝は凪でライズは皆無。諦め付くにはもってこいの状況だったのに・・・今日に限って仕事だなんて、悔やまれます(笑)。 来週はお先に上げちやいますよ(笑)。
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コゾウ
at 2007-06-05 23:55
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YUNさん、しこにじGETおめでとうございます。
僕の知り合いに、支笏湖の虹鱒北海道一きれいじゃない? と、前に聴いたことがありますが、その時帰ってきた答えが 「なにいってんの、日本一じゃい」と言ってたのを思い出しました。 また、スペイ・ドライと自分スタイルで釣った味は、格別でしょうね。 一緒にビ-ルでも飲みたいところです。でわ。
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d-yun5-fly-elise at 2007-06-06 00:11
itoさん、こんばんは。
今日もお会い出来ると思っていたのですが、午後からお仕事だったのですね。 夕方にAポイントで一度派手なライズを見ましたが(きっとブラウンだと思います)、私が見たライスはそれっきりでした。 キャッチしたのはBポイントのワンドの右の大岩です。いつもは乗らないステージなのですが風向きが右からだったもので・・・笑。 Aポイントも、夕方2度セミフライにアタックがありましたよ。フライが着水してすぐでしたから、鱒の活性は悪くなかったようです。 午前中は凪だったのですね。車を道路脇に止めた時は、一瞬僕も嫌な予感がしました(笑)。 来週、お会い出来ると良いですね。
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d-yun5-fly-elise at 2007-06-06 00:16
コゾウさん、こんばんは。ありがとうございます。
やっぱり支笏湖のレインボーは本当に綺麗ですよね。 岸際に横たわるレインボーのボディが日差しを浴びてプラチナ・シルバーに輝いておりました。 仰るように好きなスタイルで出会えると、また嬉しさもひとしおですね。 今晩は、ベットに入って今日の事を思い出しながら、ひとりでニヤニヤしていると思います(笑)。
Yunさん、こんばんは
調子出てきましたね!! 私も負けないで来週セミで1本出したいものです。
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オーパ
at 2007-06-06 08:03
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昨日はお疲れ様でした!
天候にも恵まれ、とても気持ちの良い支笏湖でしたね。 Yunさんの初登録でダービーにも火がついたような気がします。 それにしても4回もアタックがありましたか!? 僕には一度もありませんでしたよ。フライの出来の差が出たようですね。 セミフライに一工夫してみようかな? 兎に角、初ゲット、おめでとう御座います! 僕らも後に続きますよ~!!
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sin
at 2007-06-06 12:55
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Yunさん、心洗われるような綺麗な虹鱒ですね!おめでとうございます。
マーキスのドラグ音聞いてみたくなりました。いい音するんだろうな~ 今度は虹鱒に会いに行きます。
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d-yun5-fly-elise at 2007-06-06 19:24
まーさん、こんばんは。
おかげさまで、今年も何とかセミフライで支笏湖の鱒に出会えました。 それにしてもジャンプの度に、いつフライが外れるかとヒヤヒヤものです(笑)。セミの鳴き声もそうですが、結構飛んでいるのを見かけましたよ。 来週も良い状況に恵まれるといいですね。
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d-yun5-fly-elise at 2007-06-06 19:36
オーパさん、こんばんは。こちらこそ、昨日はお疲れ様でした。
湖畔でのcafeオーパのコーヒー、ほのかな苦味があって美味しかったです。おかげで少しゆっくりする事が出来ました。ご馳走さまでした。 最初は今日もダメかなと思ったのですが、風向きが変わってポイントを少し移動したのが結果的には良かったようです。 お別れしてから、2回アタックがありました。さらに右の奥のポイントです。 私のフライは相変わらず不細工ですが(笑)、最近スペイキャストで遠投するとフライをよく見失うので、ボディにエアロドライウイングでポストを立てて目印のようにしています。それでも見失うのですが・・・笑。 湖畔でまたお会い出来るのを楽しみにしております。
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d-yun5-fly-elise at 2007-06-06 19:46
sinさん、こんばんは。ありがとうございます。
綺麗だなぁ~。それが一緒に祝ってくれた友人との感想でした。支笏湖の夜釣りも、またある意味面白そうですが、やっぱり太陽が顔を出した日中にビカビカのメタリックボディ・レインボーに出会いたいものです。 かなり元気がよかったのか、寄せては沖に走られと何度も繰り返し、その度に心地良い逆回転音が響き、気分は最高でした。そんなレインボーに、また出会いたいものです。
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abu-z4 at 2007-06-06 21:42
Yunさん、こんばんは。
グッドサイズのレインボー、おめでとうございます。 代休が取れず、ご一緒できなかったのが残念です。 僕もこの目で見てみたかった。 良いシーズンがやって来て、行くところに迷いますね。 来週こそはご一緒できるかもしれません。 宜しく。
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いつも見ています
at 2007-06-06 21:48
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こんばんは。凄いです!!本当にいつも良く釣りますね。私の支笏湖の印象は「チビアメの支笏湖」「釣れない湖」といったところです。かなりの確立でヒットさせている状況に驚きしかありません。このブログをみていると自分も行ったら釣れるんじゃないかと錯覚させられます。支笏湖をガイドしてもらいたいです。
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d-yun5-fly-elise at 2007-06-06 22:16
ABUさん、こんばんは。
ありがとうございます。火曜日は、最後まで本流に行こうかどうか迷ったのですが、結果的には支笏湖に行って正解だったのかもしれません(笑)。まぁ、たとえ鱒に出会えなくても、あの開けたロケーションでキャスティングしているだけでも十分楽しいのですが・・・笑。 セミのシーズンが始まると、意外とシーズン初期は鱒の反応が良いように思っています。でも、そのうち反応がセレクティブになってさらに悪くなり、いつもウーさん達に翻弄される事が多くなるのですが・・・笑。 火曜日ですか?来週、御一緒出来ればいいですね。でも、状況によっては本流の方に車を走らせるかもしれません。
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d-yun5-fly-elise at 2007-06-06 22:33
いつも見ていますさん、こんばんは。
そんなことはありませんよ。たまたまです。私の中でも支笏湖は本当に釣れないと思っている湖の一つです。屈斜路湖に行った時は、時期が良かったからなのかもしれませんが、こんなに鱒の反応があるんだと思ったぐらいですから・・・笑。 私自身は、シーズンの初期と後半に反応が良かった印象があります。あとは風と波でしょうか。凪だとやっぱり厳しいですよね。鱒は意外と岸近くを回遊してくるのかもしれませんが、最近スペイキャストを始めるようになって、今ぐらい水位が高くなるとバックスペースを気にせずキャスト出来るのでとても助かっています。波が少し立っていると、太いスペイラインの着水音やアンカーの立てる音も、幾分ごまかす事が出来るのかもしれません。 私は国道沿いの南岸に入ることが多いですが、どの場所でも一概には言えませんが、各ワンドの両端が良いような気がします(かけ上がりが近い方がよりベターです)。風向きと潮の流れを考えて、セミフライをどんどん流すというか漂わせると、もしかしたらガボッと出るかもしれませんよ。 参考になれば幸いです。
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daisaku613 at 2007-06-07 01:29
こんばんわ。
素晴らしい魚との出会い、幸せですね。 僕の夢は来シーズン以降に継続です。
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いつも見ています
at 2007-06-07 14:05
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こんにちは。早速のアドバイスありがとうございます。近々、支笏湖釣行を実現させたいと思います。その時はご報告致します。
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masuonoyakata at 2007-06-08 13:38
YUNさん、こんちわ^^鱒夫です。
調子良いんじゃないですかぁ? グッドサイズ連発ですね^^おめでとうございます。 ドライは心臓に悪いですが、ドキドキ感がたまらないですね^^。 また素敵なブログ楽しみにしています。
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d-yun5-fly-elise at 2007-06-08 21:10
daisakuさん、こんばんは。
久しぶりに、支笏湖らしい美しいレインボーに出会えました。 とにかく、太陽の日差しを浴びて輝くレインボーは言葉を失うぐらい美しかったです。また、出会えるといいのですが・・・笑。 daisakuさん、来シーズンは眩いサクラマスに出会えると良いですね。
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d-yun5-fly-elise at 2007-06-08 21:12
いつも見ていますさん、こんばんは。
アドバイスと言えるほどのもかどうか分かりませんが、参考になれば幸いです。支笏湖に行かれた際は、良い波と風が出ている事を願っております。頑張って下さいね。
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d-yun5-fly-elise at 2007-06-08 21:21
鱒夫さん、こんばんは。お久しぶりです。
いえいえ、そんなに調子が良いという訳ではないのですが、相変わらず楽しく釣りをさせていただいております。支笏湖で、それもセミフライでレインボーに出会うのは久しぶりではないでしょうか(笑)。いつも逃げられてばかりでしたから・・・笑。 仰るように、ドライは心臓に悪いです。川の場合はある程度ドライに出る瞬間が予想出来るというか、キャストから次のキャストへの時間の間隔が短いので、区切りが付きますが(集中力にもメリハリが出来ます)、湖の場合だと(10分以上漂わせることもあります)、本当にいつ出るか予想もつかないのでなかなか集中力が持続しません。そんな時に限ってガバッと出るたりなんかすると、本当に心臓が痛くなります(笑)。 |
札幌市在住Yunの北海道をメインフィールドにしたスカジットキャストによるトラウト&サーモン釣行記。R.B.MeiserなどのダブルハンドのカスタムスペイロッドやTube Flyなどの気ままなフライタイイングにお気に入りのリール、それにオリジナル音楽(Dub Techno, Ambient, Minimal, Drone, Noise Industrial)とフィールド動画(YouTube)などなど by Yun カテゴリ
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