晴れ渡る火曜の午後の青空の下、今年最後の支笏湖の湖畔に佇む。
本当に静かだった。
風ひとつなく、湖面はまるで鏡のように静まりかえっていた。
「ドッボ~ン」。突如大きな鱒が静かな湖面を割り、大きく高く空に向かってジャンプ。
そして自らが描いた波紋の上に着水。さらに大きな二重の波紋を作り出した。
そんな土曜日と同じような光景が鏡のような湖面に上で何度も繰り広げられている。
まるで "last dance, last lake,last fishing..."。
いつ何時、不意な出来事が起こってもおかしくない状況に思えた。でも、何も起こらない。
フライ?ライン?リトリーブ?。何がいったいマッチしていないんだろう。
ライズのあった方向めがけてキャストしても、今度はついさっきまで僕が何度もキャスト&リトリーブしていた場所で大きなライズ。
僕はしっかりと支笏湖の大きな鱒に翻弄されていたに違いない。
ふと気が付くと、冬の太陽は山肌に沈み、湖は空の色を映し出した濃いブルーに染まろうとしている。
周りの空気がピリっと引き締まり始め、幾分その深さを増したようにさえ感じる湖面に柔らかい月がぼんやりと揺らめきながら映っていた。
あと1回。そう、あと1回だけキャストしたら終わりにしよう。
そう自分に言い聞かせて、僕は"last casting"。
今日のBGM:Goran Bregovic / Ederlezi
東欧の音楽にはなぜか不思議な魅力がある。きっと様々な文化が融合しているせいだろう。
オリエンタルなメロディー。
最近知った"Time of the Gypsies"という映画のsoundtrackに含まれているこの曲を聴くと、なぜか僕はノスタルジックな気分にさせられる。4曲目がお気に入り。