interaction = 相互作用
1年に一度だけ、秋になると友人の主催する現代美術のアート・スクールで講義を頼まれる。もちろん僕はアート関係の仕事をしている人間ではないし評論家でもない。
テーマは、「精神分析と創造」。
はっきり言ってお堅いテーマであるし、そんなテーマを勝手に決めた友人をほんのちょっとだけ恨めしく思ったりもする。
でも、一応それなりには講義はする。例えば、脳を含めた神経システムの話や心的システムの話、それにそのシステムがいかに脆弱で様々な影響を受けやすいという話や、言語的、非言語的コミュニケーションといった簡単なコミュニケーション理論の話など。身近な事なので出来るだけ分かりやすく紹介している。
一番心掛けている事は、学生さん達(といっても殆んどがいろんな職業の社会人の方なんだけれど)に自分自身のことを語ってもらう事。やはり一方通行のコミュニケーションじゃつまらない。
「自分が何がやりたいのか」、「どうしてそれがやりたいのか」等など、少しずつ掘り下げながら語ってもらう。こういう事って、決して簡単に答えが見えてくるわけではないんだろうけれど、ある意味非常に大切な作業のように僕は思っている。そんな学生さん達とのやり取りを通じて、僕自身も刺激を受けたり影響を受けたりしているんだと思うし、とても有意義な時間を過ごさせてもらっている。
周りと相互作用し絶えず変化し続ける自分。変化しない自分なんてありえないし、ある意味自分がこれからどういう風に変化していくのか興味もあるしワクワクもする。まるで回転する駒の辿る軌跡が予想出来ないのと同じように、また、大海原でエンジンが故障した小船がどこをどう漂流するかが予想もつかないようにである。
そんな訳で、先週のアートスクールでの講義はいつになく面白かった。現代美術のアーティストの卵の彼等が、これからいったいどんな作品を様々なものと相互作用しながら産出していくのか、興味深く見守りたい。