コッ、コッ、コッ。
ちょっとだけリバーブの効いた僕の乾いた足音が深夜の新宿の地下道に響いた。
新宿の駅の向こう側の賑やかな喧騒とはうって変わって、ここはまるで無機質で人の存在を拒むかのような冷たい印象を受ける。日中はまだ人通りも多いから、その印象は幾分薄らぐけれど、深夜ともなると人通りは殆んどなく、その印象は強烈に、さらに冷たく僕の中に浸透していった。人の住まない世界、生き物の温もりを感じさせない世界がそこには佇んでいた。
突然、頭の中で不思議と「東京砂漠」という言葉が浮かんだ。前川清とクールファイブの歌だっただろうか。もちろん丸ごと1曲は思い出せないけれど、「あなたのいない、東京砂漠・・・」というサビの部分だけが、何度も何度もリフレインのように頭の中で繰り返されていた。
ひとりぼっちで深夜の新宿高層ビル群に囲まれた冷たいアスファルトの道の上を歩きながら、心の中で早く北海道に戻って釣りに行きたいなぁと呟いた。