抜けるような青空が広がっていた。でも、道東の冷たい風が吹くたびに、僕の手と指の感覚は少しずつ失われていく。手と指が濡れていれば、なおさらのことで、ランニングラインを握っていても、いったい何を握っているのか分からないぐらい感覚が麻痺していた。
十分に沈みきったフライがターンを始めると、ランニングラインが、クン、クン、グゥンと引き込まれる。その相手が丸々と太ったウグイだと分かっていても、もしかしたらという期待から感覚の麻痺した指で反射的にランニングラインを強く握っていた。
アメマスの姿を求めて十勝川下流を彷徨った。
結局アメマスの姿は見つけられなかったけれど、道東の川に来れて釣りが出来ただけで十分満足だった。相変わらず風は冷たい。時折強い風が吹いて帽子が吹き飛ばされそうになる。レインジャケットのフードを帽子の上から被った。視界が狭くなった。不思議だけれど、この景色をほんの少しだけ独り占めしたような気分になった。
また、手と指の感覚が薄れ始めた。
ロッドの先から伸びるオレンジ色のランニングラインの角度が少しずつ変化していくのを眺めながら、今年の3月末に訪れた音別川河口のことを思い出していた。沢山のアメマスが僕を出迎えてくれたけれど、あの日も風が強く、おまけに身が縮むほど冷たくて、確か透き通るような青空の下を凄いスピードで白い雲が流れていったっけな。
今日のBGM:holger hiller/as is