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2005年 11月 01日

<Vol.157>山吹色

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 子供の頃から、なぜか山吹色が好きだった。小学校の授業で写生の時間があると、まだ6月だというのに山や木々の葉っぱの色を山吹色に塗りたくってしょうがなかった。でも、やっぱり山吹色には塗れないから、僕の絵具箱の中で山吹色の絵具は寂しそうにいつも新品のままだった。
 そんな山吹色が支笏湖までの間の景色の中に溢れていた。時々山吹色の中に浮かび上がる紅葉だろうか、その赤色や橙色がさらに山吹色を鮮やかにしていた。そんな山吹色に目を奪われていると、1台の赤いエリーゼとすれ違った。自分の車以外に走っている赤いエリーゼを見るのは初めて。なんとなく不思議な感じがした。

 トンネル下の右のワンドは釣りをするには絶好の状況だった。湖岸にしゃがみこんでいると、あちこちで鱒達のライズが見える。それも僕の6番ロッドでのキャスティング・レンジの中で。急に心臓がドキドキし始めた。なかなかフライのアイにティペットが通らない。ヤキモキしていると、また近くで「バシャ」と心臓に悪い音がする。敢えてライズは見ないように湖面には背を向けているけれど、今度は必ず耳栓を用意しておこうと僕は心に決めた。いったい鱒達は何を食べているのだろうか。帯状に漂う小さな黒い羽虫だろうか。でも時々「バゴッ」と派手な出方もするので、もしかしたらカメムシを食べているのかもしれない。そんなことを考えながらフォーム・カメムシをなんとか結び、ちょっとの間考えた後、欲張ってさらにトレーラーでもう一つフォーム・カメムシを結んだ。これが今日最大のミスになるとは知らずに。

 やっと準備が出来て、僕がキャストに入ろうとすると、いつの間にかライズは止んでいる。それでも鱒はその辺に居るだろうさと勝手に確信してキャストを始めた。4、5投目だっただろうか、フライが程良い波と風の中で漂っていると、突然、僕のフォーム・カメムシのトレーラーじゃない方のカメムシに「バゴッ」と鱒が出て、フライが湖面から消えた。「出た」。僕は息を飲んだ。一呼吸おいてからラインとロッドで合わせる。いつもならしっかり鱒の重量感をロッドを通じて感じるはずなんだけれども何の生命感を感じないままフライだけがヘナヘナと僕の元に戻って来た。「アレ?おかしい。今のはちゃんと乗ったはずなのに」。回収したフライを見てみると、あろうことかトレーラーに継ぎ足したティペットがゲイプとアイの間を何往復もしていた。これじゃあ鱒がフライに出ても弾かれてしまう。きっとキャストの合間に出来たものだろう。僕は欲張ってトレーラーをつないだ事を後悔するしかなかった。
 ふと気がつくと、凄い数の羽虫が飛んでいる中に僕が居た。遠くから夕方4時を知らせる音楽が聞こえてくる。
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by d-yun5-fly-elise | 2005-11-01 21:03 | fly fishing | Comments(18)
Commented by marchbrown at 2005-11-01 21:45 x
よだれが出そうな写真です!
あ、ちなみに虫のほうじゃなく、コレにライズする鱒が目的ですよw
数日、日中の気温が高め続きだそうで、3日の休みが楽しみな状況ですね!
Commented by d-yun5-fly-elise at 2005-11-01 22:14
marchbrownさん、こんばんは。
大きな鱒が、黒い帯状に漂う羽虫を吸い込むようにして食べていました。群れで移動しているようで、きっとブラウンだと思います。
カメムシも数匹見かけましたが、サイズは小さめでちょっと濃いタン・カラーでしたね。
それにしても、11月とは思えないぐらい暖かさでした。結果は寒いですが・・・(笑)。
Commented by SHU at 2005-11-02 00:01 x
Yunさんこんばんは。
ありゃー!残念でしたねー。近いうちに良いのが出そうな予感がプンプンですね。
Commented by tokyo_terry at 2005-11-02 00:40
Yunさん、こんばんわ!
トレーラーが裏目にでるとは、ちょっと悔しいですネ。次回に期待です。
話は変わりますが、絵の具の中にある緑色。何故、緑とかグリーンって名前がついていないんでしょう。幼い頃持ってた絵の具にはビリジアンって名前が付いてました。知ってます?ビリジアンの謎。
Commented by suda at 2005-11-02 00:43 x
山吹色ってまさに読んで字のごとくですね。昔の人のセンスには頭が下がります。カメムシまだ行けそうですね。
Commented by flysmith at 2005-11-02 08:36
おはようございます。なんとも羨ましい釣りです。僕のHGの芦ノ湖とは比べ物にならないくらいの生命感と野生を感じます。
しかし紅葉の湖岸ですれ違う2台のエリーぜ。なんだかドッペルゲンガーのようですね・・・。
Commented by d-yun5-fly-elise at 2005-11-02 09:33
SHUさん、おはようございます。
まぁ、いつものことですからしかたがありませんね(笑)。でも、やっぱり欲張りはいけないようです(うまくいくこともあるのですが・・・笑)。
そういえば、10月末にセミフライダービーのミーティングで知り合った方が支笏湖でのルアー釣りで96㎝のブラウンを釣ったそうです。そんな大きな鱒でなくてもいいですから、小さくてもいいから鱒に出会いたいと思っている今日この頃です(笑)。
Commented by d-yun5-fly-elise at 2005-11-02 09:39
terryさん、おはようございます。
ちょっと悔しいのですが、いつもの事なので慣れています(笑)。
ビリジアンという色の名前はどこかで聞いた事があるようないような・・・、スミマセン私にも謎です。でも、やっぱりシアンが入った色なんでしょうかね。
Commented by d-yun5-fly-elise at 2005-11-02 09:44
sudaさん、おはようございます。
子供の頃から山吹色と群青色が好きでした。山吹色もそうですが、群青色のネーミングも素敵ですよね。
この暖かさが続くなら、カメムシはもう少しいけそうです(笑)。
そういえば、昨日は平日なのに沢山の車が湖畔沿いに止まっていました。やっぱりシーズンなんですね。
Commented by d-yun5-fly-elise at 2005-11-02 09:53
flysmithさん、おはようございます。
芦ノ湖には行った事はありませんが、きっとまた違った趣があるんでしょうね。
実は支笏湖に釣りに行くときは、ほとんどエリーゼでは行かないんです。本当は近いので行きたい気持ちは山々なのですが、駐車スペースを探すのに苦労するので、普段の荷物の沢山積める車で行く事が多いんですよ。
それにしてもドッペルゲンガー(自己像幻視)、聞き覚えのある言葉です(笑)。
Commented by コゾウ at 2005-11-02 10:11 x
yunさん、ABUさん、
おはようございます。おしかったですね。運が悪いとしか、言いようがないです。僕もYUNさんが行った前の日、初めてそこに、行かさせてもらいました。まだ、初めてでしたので、どこで釣りしたらいいか、まったく未知でしたが、運良く、魚みれました。

トレイラー。僕も失敗した記憶が蘇って来ました。僕の場合は川で、
どうしてもドラグがかかり、どうしようもなくて、浮きアンカーとして
使って、うまくでましたが、よれが入ってて、切れた思い出あります。
それから、フライの大きさ重さ、キャストなど、試行錯誤した事ありました。でも、いろいろやることが大切ですよね。失敗が前進になるはずです。でわまた。
Commented by heboheboy at 2005-11-02 15:27
yunさんこんにちは、素敵な情景描写で長いこと写真に見入ってしまいました。山吹の話でモノクロにするあたりさすがだと思います。支笏湖(流入河川?)のブラウンは写真撮影にも良いという話を聞きましたがまだ溯上時期ではないんでしょうか?  要
Commented by light_cahill at 2005-11-02 19:23
yunさん、こんばんわ。モノクロ写真と文章から山吹色の支笏湖に行ってみたくなりました。まだ北海道は釣りが楽しめるなんて、羨ましいですね。
Commented by d-yun5-fly-elise at 2005-11-02 21:14
コゾウさん、こんばんは。
先週のブラウンに引き続き、今週も釣られたようですね。さすがです。コゾウさんのポイントの読みには感心するものがあります。
トレーラー。知床のカラフトマス釣りでは、トレーラーにしたフライに2匹のカラフトマスが掛かって驚いた経験がありますが、今回はそれが鱒に会えなかった原因になってしまいました(笑)。
でも、コゾウさんが仰るとおり、試行錯誤することって大事なのかもしれませんね。
Commented by d-yun5-fly-elise at 2005-11-02 21:24
要さん、こんばんは。
スミマセン。特に意図はなかったのですが、モノクロの方が何となく好きだったのでこちらを選んだ次第です。さすがだなんてとんでもありません。でも、本心はそう言って頂けると嬉しいです(笑)。
私もかなり前に聞いた話なのでよく分からないのですが、支笏湖の流入河川では12月~2月がブラウン、2月~4月がニジマスの遡上の時期だと聞いたことがあります。参考になれば嬉しいです。
Commented by d-yun5-fly-elise at 2005-11-02 21:33
light_cahillさん、こんばんは。
しっかりサーモンのファイトを堪能されたようですね。よかったです。
今年は水温が高いせいか、いつもより2週間遅れとよく耳にします。ですから鱒はまだ水面を意識しているようで、もう少しドライの釣りが楽しめそうです。その後は、シンキング・ラインでリトリーブの釣りに入ります。
支笏湖は今シーズン真っ最中でしょうか。でも、本流のニジマスも見逃せません(笑)。
Commented by 雨の日の釣師 at 2005-11-03 17:48 x
はじめまして。
いつも見させてもらってます。
こういうコメント、いささか苦手なのですが、本日予定より早めに支笏湖を撤収したこともあり書いてみました。
いつも読んで関心させられるのは、毎回の文章に『ブレ』がないこと、そして行間に『何故、釣りをするのか?』ということが感じられることです。
恥ずかしながら当方も少し前からソネットのブログで釣行記などアップしています。目印はプロフィール欄の一升瓶です。
乱文で失礼。では、いつか支笏湖で。
最後になりましたが、当方も63年生まれ、同級であります。
Commented by d-yun5-fly-elise at 2005-11-03 21:55
雨の日の釣師さん、こんばんは。はじめまして。
コメントを書くのが苦手なのはよく分かります。なぜなら、私自身も自分でBlogを始めるまでは、訪問するBlogやHPにコメントを書くのが苦手だったからです。でも、そんな中でコメントを書いて頂けて本当にありがとうございました。
雨の日の釣師さんも今日は支笏湖に行かれていたんですね。状況は悪くはないと思うのですが、私は今日も鱒とは無縁だったようです。まぁ、いつもの事なのですが。
雨の日の釣師さんもBlogをやっておられるのですね。もう少しヒントを頂けるとこちらからも訪問出来るのですが・・・(笑)。
年齢が同じなんですね。今後とも宜しくお願いします。
お互いによい釣りが出来ますように。


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